将棋先生の「盤上・盤外」この一手

湯の町別府の将棋教室から考察した社会をつづります

第5章 古墳時代 「前方後円墳とてるてる坊主」

前回のページは下記です。


第4章 縄文・弥生の疑問編 (4)「邪馬台国はどこなの?」:「幻のヤマタイコク」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手

 

それでは、今回の記事をどうぞ。

【1】    第5章 古墳時代 「前方後円墳とてるてる坊主」

 

古墳」・・・。

この言葉は小学校の教科書にものっていて、こんな感じで説明され
ている。

 

古墳とは3世紀の後半から造られはじめた豪族や大王の墓。
「大山(だいせん古墳」は、世界でも最大級の墓で形の上からは
前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)」である。
「仁徳陵(にんとくりょう)古墳」とも呼ばれている。

 

前方後円墳」って言葉を僕は小学6年生の時に習った。

いきなり先生が「古墳には『ぜんぽうこうえんふん』って言うのがあるんだけど、どんなんだと思う?」って問いかけたのだ。

「ゼンポーコーエンフン」?

なんか、お経みたいだなあ・・・。
・・なんて考えていたら、先生が黒板にその形を書きながらちゃんと説明してくれた。

「『方』っていう字は『四角』の意味やね。
 ほら正方形とか長方形とかの『方』ね。
 そして『円』はわかるよね。『丸』ね。
 つまり、前が四角で、後ろが丸の形をしたお墓のこと、
 これが前方後円墳なのね。」

「なるほど。」と僕は理解した。

でも先生の描いた絵が、どうみても「てるてる坊主」に見えてしかたがなかった。
僕やったら「てるてる坊主古墳」とでも名付けるなあと思った。

で、その時、「?」と思ったことがある。

なんで、前が四角で、うしろが円なのかってことだ。

これ、別に「てるてる坊主型」、つまり、かっこうよく言えば「上円下方墳」でもいいんじゃないかって。

で、センセに聞いてみると、
「それは良い考えね。
 でも、『前方後円墳』って名前に決められてるんだから、そう覚
 えてね。
 第一、てるてる坊主は、まだそのころには作られていないわ。」
と優しく言われてしまった。

とまあ、そんな思い出がある。

では、いったい、いつ、誰が、なぜ「前方後円墳」と命名したのだろうか・・・。

実は、名付けの親は、江戸時代の学者「蒲生君平(がもう くんぺい)」という人なのだ。

その蒲生さんは、当時、荒れ果てていた古墳を調査し、本にまとめた人だ。

で、どうして、蒲生さんが前方後円墳と名付けたのかというと・・・。
一言でいえば、あの古墳の形が「牛車」に見えるからということなのだ。

「牛車」・・・。
牛に引かせて人間が乗る車ですね。
あの、平安貴族などが、優雅に、まったり、まったりと進む車です。

古墳の形から言えば、丸の部分に人が乗って、四角の部分を牛に引かせる「牛車」。
つまり、死んだ豪族や大王を、あの世まで乗せていく「牛車」が古墳なんだということ。
だから、前が四角で後ろが丸。
これが逆だと人が牛を引くことになっちゃう。

なるほど・・。蒲生さん、さすがだなあ。と僕は感心していた。
でも・・・。
ちょっと待てよ、と僕は思った。

たしかに、「てるてる坊主」はこの時代には存在しなかっただろう。
じゃあ・・・。
じゃあ「牛車」はこの時代に存在したのだろうか。
いや、実は「牛車」だって存在していない。
「牛車」は古墳時代から見れば、遠い未来の乗り物なのだ。

明治時代の人が「スペースシャトル」も「キティ」ちゃんも知らないように、古墳時代の人は「牛車」も「てるてる坊主」も知らない。

つまり、「前方後円墳」という名前をつけることは、「てるてる坊主古墳」という名前をつけることと、ほとんど等しいのだ。

ならば、僕らは「前方後円墳」という名前にしばられてはいけないのではないか。
まあ、もちろん、テストなんかに出ちゃうから、その名前を知っておいた方がいいだろうけれど・・・。
でも、その名前は「てるてる坊主古墳」とあまり変わらないっていうことも知っておいた方が歴史を楽しめるのではないだろうか。

ちなみに、僕は、大人になって、空の上から「大山古墳」を1度だけ見たことがあるんです。
大阪の上空を飛行機で飛んでいるときに見たのです。
その時、僕は、あの古墳は「てるてる坊主」見えなかった。

大人の僕には「弥生時代のツボ」の形に見えたのです。

大切なものをツボにしまうように、豪族や大王の遺体を巨大なツボ型の墓におさめたのではないかな・・・。
そんなふうに思いました。

古墳の形ひとつとっても、歴史というものは充分に楽しめるものだと思います。
実は、その楽しみを最初に味わった人は、蒲生君平さん、その人なのかも知れません。

ではまた。

 


第6章 蘇我氏の時代 (1)「馬子監督と長嶋コーチ」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手