将棋先生の「盤上・盤外」この一手

湯の町別府の将棋教室から考察した社会をつづります

『久山秀子探偵小説選Ⅱ』を読んだんです

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久山秀子探偵小説選Ⅱ』を読んだんですがね。やっぱ、天才ですよ、久山さん。『Ⅰ』は大正ロマンを背景に、女性スリの久山が探偵となってしまう異色の展開が中心の短編集だったんですがね。『Ⅱ』の方は、江戸時代の豪商、由兵衛が大活躍する短編もかなり掲載されてるんですね。これね、もう読んでる内に、江戸にスリップしちゃう感じなんです。極上の描写力。そして、ストーリーの方も、よくぞ、これだけアイデアが出るなあって思いますよ。すげえやって思わず漏れちゃいます。

考えたら、江戸時代って科学捜査なんてないでしょ。指紋捜査もなければ、通話記録だって使えないですよ。だから、犯人捜しも大変ですよね。でも、きちんと読者にもヒントを与えてくれてるんです。そして、快刀乱麻のごとき由兵衛の解決劇。

もう、やめられない、とまらない。ご注意、ご注意。癖になるのが久山ミステリーですぞ。

『名探偵の掟』/東野圭吾を読んだんです。

名探偵の掟』/東野圭吾を読んだんです。

そもそも、東野圭吾さんが大好きでしてね。だって、ユニークで軽妙なんです。

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下記のガイド記事をオールアバウトにアップしたこともあるんですが、もちろん東野さんの本も入っています。

allabout.co.jp

 今回の『名探偵の掟』は、実は掟破りなんですね。推理小説の一つの要はリアリティだと思うんです。考えれば、現実には起こりえないことを読者に提示するわけですから、「こんなことあり得ないよなあ」って思わせたら、負けですよ。手品は実際の人間が行うから「すげえ」ってなるんであって、あれ、アニメでやったってすごくないでしょ。それと同じじゃないかな。推理小説は荒唐無稽ではつまんない。うひゃあ、こんなトリック考えつくのか、これなら、あり得るよね。って現実感が勝負所の一つですよ。で、作者はその描写力で現実感を持たせるんですよね。ところが、この作品は、現実感をなくさせてるんです。なんと、登場人物が、自分は小説の中の脇役ですよってな具合に、いわゆるカミングアウトしてるんです。これ、推理ファンへの挑戦でしょう。その意味で掟破りなんです。

たとえば、主人公の探偵と警部のあいだで、こんなセリフのやりとりがあるんです。これ、謎解き前の重要シーンですよ。

警部「犯人が子守唄を使った理由についても大丈夫なんだな」

探偵「もちろんです」

警部「読者も納得させられるな?」

探偵「それは、なんとも言えませんが」

 

 

ね。掟破りでしょ。

しかし、さすがに東野さん。この掟破りが、現実から離れた現実感をかもしてるんです。これには脱帽です。東野作品のユニーク軽妙をたっぷり味わえる、必読の短編集ですぞ。

落合信彦さんの『ケンカ国家論』を読んだんです

落合信彦さんの『ケンカ国家論』を読んだんですよ。

このタイトル、おそらくは天下国家論をもじってのことでしょうが、何とも物騒な名前だとは思います。

でも、僕は、この人の本は好きでしてね。ケネディ暗殺に裏側があったかも、なんて、当時子どもだった僕は思いもしなかったんですが、落合さんの『2039年の真実』って本を読んで興味を持ったんです。ありゃ、あと24年か。僕、79歳だなあ。

落合さんは、他の著書でも書いているんですが、とにかく日本は諜報機関を持てと。しっかりした情報収集こそ武器なんだと。急がないと手遅れになっちゃうぞと。それがケンカに勝つ国家だぞと。

それは、国家だけでなく、個人も同じだぞ。そう訴えてくるんです。国家論でありながら、啓発論でもあるんですね。これも、落合さんの特色です。

落合さんは若かりし頃、あのケネディ大統領の弟さんだったロバートさんの選挙を手伝ってるんですね。そこで、落合さん自身が啓発されてるんです。そんな話も出てきます。

かなり、その視線は厳しく、オバマ大統領なんてやり玉ですね。

そんな落合さんに同意するかしないかは、とにかく読んでみてからでしょう。

2013年3月11日初版です。

 

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