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将棋先生の「盤上・盤外」この一手

湯の町別府の将棋教室から考察した社会をつづります

『名探偵の掟』/東野圭吾を読んだんです。

名探偵の掟』/東野圭吾を読んだんです。

そもそも、東野圭吾さんが大好きでしてね。だって、ユニークで軽妙なんです。

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下記のガイド記事をオールアバウトにアップしたこともあるんですが、もちろん東野さんの本も入っています。

allabout.co.jp

 今回の『名探偵の掟』は、実は掟破りなんですね。推理小説の一つの要はリアリティだと思うんです。考えれば、現実には起こりえないことを読者に提示するわけですから、「こんなことあり得ないよなあ」って思わせたら、負けですよ。手品は実際の人間が行うから「すげえ」ってなるんであって、あれ、アニメでやったってすごくないでしょ。それと同じじゃないかな。推理小説は荒唐無稽ではつまんない。うひゃあ、こんなトリック考えつくのか、これなら、あり得るよね。って現実感が勝負所の一つですよ。で、作者はその描写力で現実感を持たせるんですよね。ところが、この作品は、現実感をなくさせてるんです。なんと、登場人物が、自分は小説の中の脇役ですよってな具合に、いわゆるカミングアウトしてるんです。これ、推理ファンへの挑戦でしょう。その意味で掟破りなんです。

たとえば、主人公の探偵と警部のあいだで、こんなセリフのやりとりがあるんです。これ、謎解き前の重要シーンですよ。

警部「犯人が子守唄を使った理由についても大丈夫なんだな」

探偵「もちろんです」

警部「読者も納得させられるな?」

探偵「それは、なんとも言えませんが」

 

 

ね。掟破りでしょ。

しかし、さすがに東野さん。この掟破りが、現実から離れた現実感をかもしてるんです。これには脱帽です。東野作品のユニーク軽妙をたっぷり味わえる、必読の短編集ですぞ。