将棋先生の「盤上・盤外」この一手

湯の町別府の将棋教室から考察した社会をつづります

苦悩と沈黙、そして決断

『苦悩と沈黙、そして決断』

Yさん(小4)とGくん(小5)の対局観戦記を合同新聞に書かせてもらいました。

対局当日、僕はスタッフとして会場にいたのです。
そして、二人の対局を観ていました。

記事にも書いたのですが、序盤早々にG君が「角」打ち。

その手を目にして、Yさんの手がぐっと止まったのです。
あきらかに、苦悩の色が浮かびました。
しかし、何とかして、しのごうと沈思黙考。
しばらくして、素晴らしい切り返しを見せました。

すると、今度はG君が、はっと顔をゆがめたのです。
思いもよらなかった切り返しに、眉間にしわを寄せて考えはじめました。

頭の中で、先の先を読み、それぞれの場合の判断をしようと時間をかけます。
そして、「角」を捨てるという手が最善だと苦渋の決断をしたのです。

このたった3手の中に、二人の苦悩と沈黙、そして決断が凝縮されていたのです。
二人の表情からは普段のあどけなさが嘘のように消え、静けさの中に怖ささえ感じられました。

これが将棋なのです。
これが、真剣勝負の将棋なのです。

だから将棋を子ども達に。
その理由の一つが、この二人の対局にあると僕は思うのです。