将棋先生の「盤上・盤外」この一手

湯の町別府の将棋教室から考察した社会をつづります

第4章 縄文・弥生の疑問編  (2)「邪馬台国はどこなの?」:「ウオ・ジャオ・チンジュ」

第4章 縄文・弥生の疑問編 
(2)「邪馬台国はどこなの?」:「ウオ・ジャオ・チンジュ」
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前号は下記です。


第4章 縄文・弥生の疑問編 (1)「邪馬台国はどこなの?」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手

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「ナシメさん・・・?
 ナシメさんって人が『ヤマタイコクの場所論争』生みの親だって
言うの?
 それにしても、ナシメさんって名前、初耳だわ。
 そもそも、私が歴史を嫌いになったのは、人の名前がたくさん出
てくるからよ。
 特にナシメみたいに外国人の名前は覚えにくいわ。
まあ、おいしそうな名前ではあるけ ど・・・。」

前号を読み、こう言い放ったのは僕のかみさんである。

いや、かみさん・・・。
ナシメさんって日本人なんだけど・・・・。
ホントに読んでくれたのかなあ・・・?
それに、「おいしそうな名前」って、何のこと・・・?
謎を残し、かみさんは去っていった。

まあ、いいや。
教科書にも載っている疑問点、
いわく「ヤマタイコクはどこにあったのか」。

僕はその質問を魏志倭人伝(ぎしわじんでん)の作者、
陳寿(ちんじゅ)さんに聞くのはちょっと方向が違うって思ってい
る。

まっ、とにかく、霊界に行って陳寿さんに会ってみましょう。

ビロロロローン。

 

今、ヤマタイコクにお詳しい陳寿さんのお宅の玄関前です。
では、ドアを開けます。
・・・いました。いました。今は亡き本物の陳寿さんです。

陳寿さん、こんにちは。

「ニイ・メン・ハオ。ウオ・ジャオ・チンジュ。」

げげっ!そうか!中国語か!いかん、いかん。まずいな、これじゃ。

「心配はいらん。倭国語も話せることにしよう。
 じゃないと話がすすまんじゃないか。
 こんにちは、みなさん。私が陳寿です。」

おおっ!陳寿さん、あたたかいご配慮、感激しました。
では、さっそく、質問させて下さい。
あなたは魏志倭人伝(ぎしわじんでん)の著者ですね。

「イエス。バット、ノー。」

陳寿さん、英語もいけることにしたんですね。
それにしても何ですか、バット、ノーって。

「私は、たしかに、倭人のことを記述したことがある。
 しかしじゃ・・・。
 しかし、私がかかわった本のタイトルは『三国志』という歴史書
 じゃ。
 その中の『魏書(ぎしょ)』のそのまた中の
 『東夷伝(とういでん)』のまたまた中の
 『倭人条(わじんじょう)』に倭人のことを記録したんじゃ。
 それを、あなた達が勝手に『魏志倭人伝』などとかっこよく呼ん
 でおるだけじゃ。」

そ・・・そうだったんですか!

まあ、「三国志・魏書・東夷伝倭人条」なんて書くと、あまりに
難しすぎて、かみさんが怒りだしますから「倭人伝」でお願いします。

では、お聞きします。
なぜ、あなたは「倭人伝」にヤマタイコクの位置をあいまいな表現
で記述したのですか?

「ばっかもーん!
 わ・わ・わ・私のどこがアイ・マイ・ミー!
 ユー・ユア・ユー!ヒー・ヒズ・ヒム!シー・ハー・ハー!」

うわっ!陳寿さん、すごく興奮して、英単語レッスンになってしまっ
てますよ。

「シー・ハー・ハー・はあ、はあ、はあ・・。
 すまん、すまん。落ち着いて行こう。
 私のどこが、あいまいじゃと言うのじゃ?
 我が皇帝にささげる正式なる歴史書に、この陳寿、あいまいな書
 き方などせぬぞ。」

これは、失礼しました。
いえ、「水行十日、陸行一月」つまり「船で十日、歩いて一月」な
んて書き方が、あまりにもあいまいに・・・。
ふつう、何キロメートルとか、そんな距離の書き方をするんじゃな
いですか?

「おお・・・。
 思い出したぞ。そう言えばそのような書き方をしたわい・・・。
 しかし、ヤマタイコクより前の部分はきちんと距離を書いておっ
 たはずじゃぞ。
 もっとも単位はキロメートルなんてのじゃなく、里(り)という
 単位を使ったがね。」

あっ、そう言えばそうですよね。朝鮮半島からヤマタイコクまで、
いくつかの国を経由してたどるように書いてますね。
そして、たしかに、ヤマタイコクの一つ手前の国「フミコク」まで
は、きちんと○○里って書き方をしていますね。
なぜ、かんじんの部分に「水行、陸行」なんて書き方をしたのです
か?

「ああ、そのことか・・・。
 簡単な事じゃ。『フミコク』までは、すでに、ずーっと前から、
 よーく知っておったのじゃ。
 だから、里で距離を書いた。
 倭国のこともけっこう知っておるつもりじゃった。
 まあ、しかし、我が中国も、その頃は戦乱の時代でのお・・・。
 あまり倭国のことなどかまってはおれなかったのじゃ。
 そんな時じゃった・・・。
 『ヤマタイコク』という国から、初めての使者が魏にやってきて
 のお・・・。
 何でも、『ヒミコ』とかいう女王のいる国で三十カ国をまとめて
 いるというのじゃ。」

あっ!その使者ってナシメさんのことですね。
ちゃんと陳寿さんが「倭人伝」に書いていてくれてますよ。

「そうそう、ナシメとか言いおったのお・・・。
 ヒミコからの正式の使いじゃった。
 当然、魏の役人はヤマタイコクの場所を聞いたわい。
 フミコクから先はどう行くのかとな。
 するとそのナシメが『船で十日、歩いて一月もかかります。』と
 語ったのじゃ。
 まあ、しょうがないわい。
 無知な倭人じゃから、里という単位を知らぬのも無理はない。
 それでも魏の皇帝はお喜びになってな。
 よくぞ、そのような遠方からやってきたと、たくさんの土産をお
 持たせになられたぞ。」

あっ、そのお土産の話も倭人伝に書き残してくれてましたね。

「ああ、そうじゃ。それほど細かく正確に書き残したのじゃ。
 もちろんナシメというヤマタイコクからの正式の使者の言ったこと、
 つまり『水行十日、陸行一月』も正確に書き残したぞ。
 あいまい、どころか、かゆみにムヒじゃ。いや、正確無比じゃ。」

おもしろいなあ、陳寿さん。
じゃあ、あとは、やはりナシメさんに聞くのが一番ですね。

「そうじゃ。その通りじゃ。
 いくがよい、霊界レポーターよ。
 ナシメの元へ・・・。」

おおっ、なんか感動的ですねえ・・・。
ところで、ナシメさんのお宅ってどこなんでしょうか?

「ナシメのところか・・・。もちろん、水行十日、陸行・・・。」

あっ、いやもう、けっこうです(汗)。自分でさがして行きます。
ところで陳寿さん、倭人伝、書き残してくれてありがとうございま
した。
お陰で、歴史が楽しくて楽しくて・・・。
これ、気持ちばっかりですが、「笑点じるしのざぶとん」一枚お持
ちしました。どうぞ、お使い下さい。

「シェシェ。」

えー、ここらへんで、陳寿さん宅からのレポートを終わります。
次回は、注目のナシメさん宅を直撃インタビューです。

この霊界インタビュー、もちろんフィクションであり、事実ではあ
りません。

その時、かみさんの声がした。
「ごはん、できたわよー。」
「サンキュッ!今日のおかず何?」
「今日のおかずは、煮しめよ。煮しめ。」
「煮しめ・・・・。ニシメ・・・。
 あーーーーーっ!かみさんの謎かけがとけたぞ!!」

 

次号は下記です。


第4章 縄文・弥生の疑問編 (3)「邪馬台国はどこなの?」:「黄金バットのナシメさん」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手