将棋先生の「盤上・盤外」この一手

湯の町別府の将棋教室から考察した社会をつづります

第3章「女王の国」 その(5)「倭国=カンガルーか?」

第3章「女王の国」 その(5)「倭国=カンガルーか?」

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第3章「女王の国」 その(4)「倭国=さわだ食堂か?」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手


「なるほど・・・。たった数千人の集団で『国』だと満足していた弥生時代の人たちは日本全体をひとつの集団とは認識できなかったはずってことね。だから、『倭国』って名前は中国人がつけた・・。
  中国人からすれば、自分の国の名前さえ自分で決めていない『ひとまかせ』な国に見えたってことか・・。
それで、『人』に『委せる』、つまり『倭』・・。
うん、まあまあ納得ね。
 で、もう一つの説・・・。『倭国=カンガルー』って何のこと?」
以上、かみさんの感想である。

カンガルー・・。
もちろん、あのオーストラリアにいる「カンガルー」です。
カンガルーって名前は、どうやって付けられたか知ってますか?
あれ、勘違いで名前が付いちゃったって説が有力なんです。
詳しく言うと・・・。

カンガルーを初めて見たある人が現地の人にこう聞いた。
「あの動物なんてえの?」
すると現地の人がこう答えた。
「カンガルー」。
「なるほどね。カンガルーっていう動物ね。メモ、メモ。」
で、丸くおさまってるようだけど、そうじゃないんですね。

なんと現地の言葉で「カンガルー」ってのは「僕、知りません。」っ
てことだったんです。
つまり、現地の人は、質問に「知りません」って答えただけのこと。
なのに、勘違いが「カンガルー」って名前を生んじゃった。

このすばらしき勘違いをやっちゃったある人・・・。
実はジェームズ・クックってイギリス人。
キャプテン・クックって愛称で有名な探検家・調査官なんだ。
ちなみにクックさんが世界一周に使った船はエンデバー号。
エンデバー号といえば、日本人宇宙飛行士の毛利衛さんや若田光一
さんが二十世紀に乗ったスペースシャトルの名前にも使われている
ほど・・・。
それほどの有名人なのだ。
勘違いのクックさん、やるねえ・・・。

この話が、なんと十八世紀のこと、近代産業革命のまっただなか。
一世紀前後の「倭」の話とくらべれば、ついこのあいだのことだ。
それでも、こんなふうに外国人同士のコミュニケーションはどうしても勘違いを生む。
そして、それが正式な言葉として広まっちゃうんだ。

ならば、ならば・・・。
「倭」だって、そんな勘違いが生んだ言葉かもしれない・・・。
キャプテンクックをさかのぼることはるか昔、そう弥生時代、日本のことを調べていた中国の調査官は、何らかの形で現地人、つまり
当時の日本人が使った「倭国(ワコク)」という言葉を日本全体を表す国の名前だと思っちゃったんじゃないか。
これは、充分に考えられることだと思う。
少なくともそういう可能性を探ることは歴史の楽しみ方の一つだと僕は思う。

では・・・。
そういう誤解を与えるような言葉があるだろうか・・?
弥生時代に「倭」というカンガルーを生み出すその言葉は次のような3つの条件をクリアーしなくちゃいけない。

1,「ワ」と発音する日本古来からの言葉であること。
2,「国」と関連づけられる言葉であること。
3,数千人単位で「国」だと思っていた為政者が、認識さえもできなかったと思われる日本という大きな範囲について語る場面で使われた言葉であること。

「ワ・ワ・ワ・ワ・・・・ワ・ワ・ワ・ワ・・」
いや、別にクールファイブではないが・・・。
(作者注:「クールファイブ」とは、あのウタダヒカルさんのお母さんである藤圭子さんの元の旦那さんの前川きよしさんをボーカルとして結成されていた演歌グループ。
バックコーラスのみなさんが「ワワワワ、ワワワワ」と繰り返して歌い、一九七〇年代に物まねする子ども達が続出するほどすさまじい人気だった。)

僕は考え続けた。
そして、とうとうたどり着いた。
「倭(ワ)」を「カンガルー」たらしめたその言葉は・・・・。

(次号に続きます。)


第3章「女王の国」 その(6)「クックさんと、『ヤマト』が『大和』と書くわけ」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手