将棋先生の「盤上・盤外」この一手

湯の町別府の将棋教室から考察した社会をつづります

 女王の国    (2)「マラソンか園長先生か?」

 女王の国    (2)「マラソンか園長先生か?」


女王の国 (1)「暴走族の落書き」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
で、そのヒミコさん、どんな暮らしをしていたかというと・・。
倭人伝にはこう書いてある。これは多くの教科書でも紹介されてい
る。
**********************************************************
神に仕え、宮殿にこもり、顔も見せずに呪文のようなお祈りのよう
なことをしている。夫はいない。
**********************************************************
げげっ。これって、神社の巫女(ミコ)さん、そっくりじゃないか。
いえいえ、正月だけバイトでやってる臨時のミコさんじゃなくて、
本格的なミコさんですよ。
「ミコ」を辞書で調べてみるとこのように書いてある。
***********************************************************
巫女(ミコ):神に仕え、祈りを捧げる。未婚の女性が多い。
***********************************************************
ねっ、やっぱり、そっくり。
しかも、しかも「ヒミコ」さんと「ミコ」さんだもん・・・。
言葉の響きも似てるじゃないか!
ここまで似ているとなると、偶然の一致とは言いにくいと思いませ
んか?
僕には、これはもう、二つの可能性しかないと思える。
ヒミコさんは「マラソン」か「園長先生」か・・どちらかである。
ちょいと詳しく説明します。
まず、みなさんもよくご存じのスポーツ、「マラソン」
その昔、ギリシアのある勇士がマラソンという村から首都アテネ
で走り、戦争の報告をしたという故事にちなんだ競技だ。
つまり、マラソン村という固有名詞がマラソンという競技の名前、
いわゆる普通名詞になっちゃたわけ。
これを、ヒミコさんにあてはめてみると・・・。
ヒミコさんがやってたお祈りなどの活動が広まり、一般化され、似
たような活動をする女の人全般を、ヒミコの名にちなんでミコと呼
ぶようになった。
つまり、マラソンのように、「ヒミコ」って固有名詞が「ミコ」っ
ていう普通名詞につながったってことです。
これは可能性としてはありますよね。
けれど、どうかなあ・・。
「ヒミコ」の「ヒ」がなくなっちゃってる。
「マラソン」が「ラソン」になるようなものだ。
うーん・・・。ちょっとなあ・・。
で、もうひとつの可能性、「園長先生」。
これは僕自身の体験から生まれた考え方なんです。
僕は小学校のセンセをしてたことがあるんです。
で、入学ホヤホヤの、まだ湯気が出そうな1年生を担任したときの
こと。
かよこちゃんって女の子がこう言ったんです。
「センセ。私ねえ、今まで、まちがってたんよ。」
「何が?」
「あのね、幼稚園の時のセンセは松尾先生だったんよ。
松尾先生の名前は松尾でしょ。」
「うんうん、そうだよね。どうかしたの?」
「でね。園長先生っているでしょ。」
「ふんふん。」
「あのね、センセ。
私ね、園長先生ってね、名前がエンチョウっていう先生だと思ってたん
よ。まちがってたわあ。」
そう、かように、言葉というものは思いこみによる勘違いがあると
いうことを僕は学んだ。
かよこちゃんは「園長」という普通名詞を「エンチョウ」という固
有名詞だと受け取ったのだ。
無理もない。
「松尾先生」の名前が「松尾」なら、「園長先生」の名前は「園長」
であるべきだ。
僕はかよこちゃんを支持します。
かよこちゃん、今頃どうしてるかな。
もう社会人だよね。
おっと、で、話を「ヒミコ」にもどすと・・・。
僕が言いたいのは「ヒミコ」っていうのは人の名前じゃないかも知
れないってことです。
「園長」のように勘違いで名前だと思いこまれたのかも知れない。
ひょっとすると・・。
いや、僕の中ではとても高い可能性でこう思ってるんだけど・・。
「ヒミコ」はある個人の名前ではなく「ヒのミコ」の事だったんじ
ゃないか。
宮殿の奥深くにこもり、神に仕え、祈りをささげる独身の女性、「ミコ」。
たまたまヤマタイコクの「ミコ」が仕える神は「ヒ」だった。
「ヒ」に仕える「ミコ」、つまり「ヒミコ」という普通名詞だった。
それを聞いた中国人が人名だと勘違いした。
「あの人、誰?」
「社長さん」
「ふうん、社長って名前か・・・。」てな感じ。ありえそうでしょ。
ジャジャジャジャーン。もう一度言います。
これは、確率が高いと思う。
これならば「ヒミコ」と「ミコ」がその音が似ているだけでなく、
現代にまでつながるその役割が似ているということの説明がつきそ
うですもん。
では、ヒミコが仕えた神、「ヒ」とは何か?
僕のかみさんはこう推理した。
「ヒミコの『ヒ』は『日』じゃないかしら。『太陽』よ。
 きっと、そうだわ。古代、女性は太陽だったのよ。
 あなたも、私に言ったじゃない。『君は僕の太陽だ。』って」
あのう、僕、そんなこと言った覚えはないんですけど・・・。
まあ、いいや。
それは、ともかく・・・。
ズバリ言おう。
僕はかみさんの推理は、間違っていると思う。
ヒミコは「日」のミコではない、ヒミコの仕えた神は「太陽」では
ないと、僕は確信しているんだ。
その理由はこうだ・・・。
(次号に続きます。)


「女王の国」 (3)「ヒミコにぴったしカンカン」 - 将棋先生の「盤上・盤外」この一手